水木しげる 魂の漫画展【宇都宮美術館】

会期中にちょうど宇都宮へ行く用事ができたので、ついでに鑑賞してきました。
ついでというにはあまりにも熱心に観てしまったので、時間的にはこちらがメインの一日になってしまいました。
予想以上に原画の展示数が多いのと、絵のうまさにぐいぐい引き込まれて、気がついたら3時間以上。
こどもから大人まで楽しめる構成になっていますが、絵描きとしての水木しげる先生の凄さに圧倒されることは間違いないです。

入り口パネル

気になった作品

この企画展、どういうわけか出品作品一覧のチラシがありませんでした。
いただけたのは、会場マップのみ。
気に入った作品はメモをとりましたが、帰宅して確認すると字がよたよたしすぎていて読めない…
(しかも、途中観るのに夢中になりすぎて半分もメモしてないし)
もしかしたら若干誤っているかもしれないことを、予めおことわりしておきます。

習作 (1938年)

若き日の油絵で、ゴッホ風。
この作品以外にも何枚か油彩作品が展示されていて、それぞれタッチが違うのです。
多彩な描き方ができるんですね。

風水害とありごさん (1938年)

初期は絵本をたくさんん描いていて、その中の一作。
とにかく器用、絵柄の引き出しが多い!

ドラム缶 (1952年)

鉛筆でいくつものドラム缶をリアルに描いています。
それぞれのドラム缶の凹みやくたびれた感じの描写がすごい。
この執拗な描写が、のちのまんが作品のリアルな背景に繋がっていったんだろうなと思わせられます。

幸福(しあわせ)の甘き香り (「月刊ガロ」1965年5月1日号掲載)

短編漫画の原画が何編か展示されているなかのひとつ。
短いページ数にぎゅっと凝縮された水木先生の幸福論。

ここがすごい

人気絶頂のころ、ものすごい本数の連載をこなしていた水木先生の作画を支えていたのは、沢山の背景画の「ストック」。
予め描いておいたものを漫画原稿用紙に貼り付け、人物を加えて仕上げていたそうです。
でもその背景画の密度たるや凄まじいもので、一枚描くだけでもめまいがしそうなリアリティなのです。
そもそもそのストックをいつ描いて溜めていたんでしょう…

また、そうやって超絶密度で描かれた背景はコピーしてカラーになったり、
あるいは原画の一部を塗りつぶして別作品に変化したり。
何でもありの原点をみる思いでした。

独特のカラーは布の染色に使われる「染め粉」なのだそうです。
自分にあった使い勝手・色あいの画材を求めているうちに、落ち着いたのかな?と推測。
固定観念で画材を使うのではなくて、自分にあったものを探し求める探究心が必要だな、と感じました。

あれほど味わいのある妖怪を単純な線でデフォルメして描けるのは、ものすごい絵がうまいからなのだということを痛感。
また、空間の使い方が絶妙なのです。
暗い夜の街並みに響くオノマトペの配置にはもう、唸るしかなく。

妖怪だけでなく、戦争体験記や紙芝居、晩年のイラストや絵本(未完)など、水木先生の多岐にわたる作品が、それも原画で堪能できる貴重な機会でした。
印刷物の版下として作られる漫画ですが、やはり原画の迫力は違います。
少しでも水木作品に興味のある方は、ぜひ。

企画展情報

企画展 水木しげる 魂の漫画展
会期:2019年7月28日[日] ~ 9月23日[月・祝]
会場:宇都宮美術館

ぷちアドバイス

JR宇都宮駅、東武宇都宮駅ともに非常に離れた小高い場所にあります。
自家用車で行くのがいちばんおすすめ。駐車場は広くて無料です。満車になることはまずないかと。
駅からバス・タクシーを使う場合、いずれもかなり時間がかかると思います。宇都宮は車社会なので市街地は渋滞率高めです。

美術館のレストランは森のなかで食事をしているようで、とても心地いいです!
ちょっとした贅沢をするつもりで寄ってみるものいいと思います。
時間帯によっては混んでいて相当待つ場合もあります。

SNSでフォローする