きぶな

以前住んでいた宇都宮の郷土玩具、「黄ぶな」を色鉛筆で描きました。
昔天然痘が流行したおり、鯉のように大きな黄色い鮒を食べたところ、快癒したという昔話があるのだそうです。
いわゆるよそ者の私は「ふーん」という印象ではあったのですが、黄ぶなの姿がとても可愛らしく、宇都宮を離れたあともずっと記憶の片隅に息づいていました。

きぶな(2020年5月)
きぶな(2020年5月)

2020年5月現在、新型コロナウイルス感染症はいまだに猛威をふるっており、私自身自宅にほぼ篭りきりの生活です。
妖怪「アマビエ」の絵を描くのが流行り、私も描きましたがやっぱり「黄ぶな」も描きたいなと思って色鉛筆を手に取りました。
ゆっくりゆっくり、すべてハッチングで彩色しました。

ハッチングは一見手間がかかりそうですが、色を重ねても濁らず、重ねた色がちらちらと見え隠れして複雑な表情を見せてくれます。
時間をおいて重ねることで、ゆっくり深みがでてくるのもお気に入りです。

深い水のなか、明るい方向へゆるりと泳ぎ出る黄ぶなに祈りを託してみました。

人のいないところに出かけてスケッチをすればいいのだろうけれど、それをする気にもなかなかなれない日々、
人々も、自分も、心の中に澱が溜まってやり場のない悲しみや怒りに支配されそうになる状況。

それでも描いている間は謎の多幸感につつまれ、静かなひとときがやってきます。
私は、ひたすら色鉛筆を重ねることで、その辛い感情を明日への希望に変えたかったのかもしれません。

参考サイト その1

https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002840716-00

参考サイト その2

http://www.ueis.ed.jp/kyouzai/sinden17/kibuna/kibuna.html

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